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- 2025/06/16 掲載
【現地レポ】グーグル系ウェイモが「人間を超えた」瞬間、交通事故“ゼロ”の現実味
篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第183回)
九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日
実際どうなの?「交通事故」事情
前回言及したように、筆者は今年1月にアルファベット社(グーグル持ち株会社)傘下の「ウェイモ」がサンフランシスコで商業サービスしているレベル4の自動運転タクシーを利用する機会があった。サンフランシスコの市街地では、乗用車やバスのほか、路面電車、ケーブルカー、トロリーバス、自転車、キックボードなど多様な移動手段が自在に行き交っている。路上駐車も多く人の動きは複雑だ。
地元の交通事情に不慣れな観光客や交通ルールに無頓着な幼い子供たち、さらには勢い余った若者やホームレスなど動線が予見しづらい人々の往来も目に付く。ウェイモを初めて利用した際、スタート画面にタッチするまで緊張したのは事実だ。
だが、走行が始まるとこうした緊張感は消え、乗車中に不安を感じることはなかった。
むしろ、通常のタクシー利用で時折感じるドライバーとの相性や運転術のバラツキを気にすることがなく、車内で流れる穏やかなBGMに包まれて快適な気分だった。
ウェイモによると、サンフランシスコでは有人運転車と比較した交通事故が、エアバッグ作動を伴う衝突で87%減、負傷を伴う衝突で89%減、警察に届け出られた衝突で72%減とされる(同じ都市で同じ距離を人間が運転した場合との比較)。
データからもかなり安全といえそうだ。
米国の街中で確信した“勝者と敗者”
街中では至る所でウェイモの車両が走行しており、旅行者と思われる人々(ホテル宿泊者たち)が楽しそうに利用している姿を頻繁に見かけた。筆者が利用した際は、指定した場所に同じタイミングで別のウェイモ車両2台が到着した。それだけ多くの自動運転タクシーが走行していたのだが、オプションでニックネーム(イニシャルなど)を指定すれば、車両上部に表示されて判別しやすかった。
他方、車両上部にTAXIの表示灯がある通常タクシーは、UberやLyftなどのライドシェアが一般化しているせいか、有名ホテル前に数台が待機しているほかは、道路上で走行している姿はほとんど見かけなかった。
こうした街の様子からは、ライドシェアや自動運転車の登場によって、サンフランシスコ市内のタクシー市場が大きく変貌していると実感できた。ICTやAIとの連動による新たなビジネスモデルが社会実装され、日常生活に浸透している証左といえる。 【次ページ】おやっ? 不自然にハンドルを切るウェイモ……
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